教員ママの!勝手に!滑川町改造計画

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教員ママの野望と活動と子育ての記録。

私が胎児のエコー写真を『教材』として使う理由

教員の教えるレール『学習指導要領』

教員には、学習指導要領というものが存在する。
幼稚園・小・中学校・高校と、
その年齢で学ぶべきことが載っており、
時代に合わせて変更されることも多いが
基本的には同じような内容が続く。
(小学校の英語必修は大きな変更点である!!)

教科書はその学習指導要領で学ぶべき内容が
身に付くように作られている。
学習指導要領に従って、教科書通りに教えていれば、
全国どこの小学校でも同じような事柄が学べる。

教員はその学習指導要領というレールに沿って教える。
各先生方の授業の特色…“色”というか“味”というか…は
レールの上に乗せていくイメージであると考えている。

先日の校内研修では、授業力を向上させるため(?)、
先生方の色々な考えや知識を学びあうため、
各先生が授業で大事にしていることや
授業の作り方などをグループワークで話し合った。

その際、埼玉県教育委員会のある先生に言われたことが
「最近の先生方は授業が上手いけど、味がない」とのこと。
これはその先生の意見ではあるが、私も思わず同意した。
同じ内容を同じように教えていくわけだから、
誰が教えても変わらないのではないかと思っていた。
特に、産休・育休を経て戻ってきたが
その間、代わりの先生は必ずいるし、私でなくても良い。
教員にはいくらでも変わりがいると思った。

生殖~自分というヒトが選ばれる確率~

私は、高校の生物を主に教えているが、
生物では『生殖と発生』という分野が出てくる。
生殖の単元では、『遺伝』の話をする前に、
減数分裂(染色体が半分になる分裂)を経て
配偶子(精子・卵)が作られることを生徒たちは学ぶ。

例えば、ヒトの細胞の核に入っている46本の染色体のうち、
減数分裂を経て、その半分23本の染色体が
性別によって精子、もしくは卵に入ることになる。

ことのき、染色体の本数が半分になるためには、
母・父からもらった相同染色体(大きさ・形が同じ)のうち
どちらか一方を自然に選択してるということになる。
(全ての染色体46本中、2本ずつ相同染色体となり、
23組の相同染色体があるということになる。
…正しくは22組で、X/Yの2個の“性”染色体ではあるが…)

そして精子(染色体23本)と、卵(染色体23本)が出会うことで
受精して、元の染色体数46本に戻る=受精卵。

私の授業では、説明後、いくつか練習問題をさせた後に、
『ヒトの卵や精子には、何通りの染色体の組み合わせがあるか
(このとき乗換えは起こらないものとする)』を考えさせている。

答えを言ってしまうと、2の23乗 通り(8388608通り)ある。
相同染色体2本のうち、どちらか1本を選ぶということを
相同染色体23組分、行う(2を23回、かける)からだ。

あくまで理論上ではあるが、
つまり皆(人間一人ひとり)は、染色体800万通りから選ばれた卵と
800万通りから選ばれた精子が合体してできた、奇跡なんだと!
染色体の組み合わせが1個でも違ってたら
君とは違う人になっちゃうんだよ、と。
卵は1個だが、精子は(射精された)何億個の中の1個だから
“自分というヒト”ができる確率がとっても低いこと。
皆一人ひとりが生きている奇跡が伝われば、との思いで
この問題を授業の“味”に加えた。

…図を使わずに言葉だけで説明するのは難しいな…。

発生~子どもが体内で育つということ~

発生の単元では『受精』と、カエルやウニの受精卵が
どのようにして成体になっていくのかを生徒たちは学ぶ。
基本的にはカエルとウニの受精が分かれば良いが
私の授業ではヒトの受精も、授業の“味”に加えてみた。

ヒトの受精は保健体育でも学ぶものと思われる。
だから生物の授業では、生物らしく教える(笑)
ヒトの赤ちゃんは、胎内5週目頃から、
次世代の精子や卵をつくる準備が始まっている。
胎内5か月位で卵巣・精巣に卵原細胞や精原細胞が入る。

生まれてきたときには、すでに卵巣内に卵のもとになる
細胞(一次卵母細胞)がスタンバイ完了となっている。
思春期まではその細胞は休眠し、思春期になると
減数分裂を再開し、排卵が行われるようになる。

減数分裂(第2分裂)の途中で排卵された二次卵母細胞は
輸卵管で精子を待つ。受精が行われるのは子宮ではない!
とか、まぁいろいろ話すことはあるが、
併せて、ES細胞やiPS細胞の違いなども取り上げる。
最近の高校生はES細胞という言葉すら聞いたことがない
生徒が多かった。看護・医療系を目指している子でさえも。
ES細胞の話は長くなるので、今回は割愛するとして…。

私が高校生だったときもそうだが、
高校生はエコー写真を見たことがない子がほとんどである。
高校生の身近に、あまり妊婦が居ないのであろう。
せっかく受精や、胎内の話をしているのだから、
せっかくちょうどいいタイミングで妊娠しているのだから、
自分の今の、胎児のエコー写真を教材として使用することにした。

エコー写真はそのままだと意味が分からないので
ここが頭で、おしり、手足…このとき何㎝などの説明を書き加えた紙に
張り付けて「見たい子・興味がある子は見てみてね~」くらいの
軽い感じで授業中に全体に回してみた。

意外や意外、高校生の食いつきの良いこと!
「妹が生まれるときに、見たことあるよ~」という子や
「今度、自分のもあるか、お母さんに聞いてみる」という子もいた。
女子だけではなく、男子も意外と見ていた。
3㎝の小さな体でも、頭や手足が丸く見えるのは感動したようだ。

つい最近、病院に行って撮ったエコー写真(3D・4D)も
「見る?」と聞いたら「見た~い!」というので同じように回した。
4Dの立体的な赤ちゃんも不思議だったようだ。
もう少ししてお腹が大きくなってきたら、
胎動を触らせてあげたいと思う。

最後に

また来年度から産休・育休に入る。
やりたい野望もあるし、3年後にまだ教員を続けているかは
分からない。辞めている可能性が高い(笑)!!
でも、最後の教員生活になるならば、
生徒に何か『気持ち』を残せないかなと
思った時に、この教材を使いたいと思った。

高校生(17歳)だから、あと10年もしないうちに、
妊娠する子が出てくるかもしれない。
女子も男子も、自分が赤ちゃんだったとき愛されて育ったこと、
赤ちゃんが生まれる奇跡を覚えていてほしい。

…とは言っても、
期末テストが終われば、皆、忘れちゃうんだろうな~(笑)